(歴史)イスラムとダマスクローズの深い関係
中世イスラムの錬金術
中世イスラムでは錬金術が盛んでした。
錬金術は他のものからゴールドを創り出すというファンタスティックな魔法で、それ自体はやや怪しげな活動ですが、結果的に化学をはじめ科学全体のレベルを上げることになります。
蒸留器とダマスクローズ
アラビア人たちは、錬金術の装置の一つとして制作されたガラス製や金属製の蒸留装置でもってダマスクローズを蒸留するようになります。
ローズオイルとローズウォーター(バラ水、フローラルウォーター)の誕生です。これは10世紀頃の話です。
そして、エッセンシャル・オイルを抽出する「水蒸気蒸留法」という手法が、はじめて確立されました。それにより、ローズオイルとローズウォーターが精製され、本格的に量産されるようになります。
この水蒸気蒸留法を確立し、ローズオイルとローズウォーターの精製に成功した人物が、アラビアの偉大な科学者兼医学者イブン・シーナ(英名:アビセンナ)でした。
ちなみにイブン・シーナ先生の『医学範典』(カノン)は、近世までヨーロッパの主要大学の医学の教科書でした。
この例からも、この時代、いかにアラビアが医学・科学の先進地帯か、多彩な文化が繚乱していたか忍ばれます。
ローズウォーターと宗教儀式
イスラムの宗教儀式として「ローズウォーター」が重宝されたことから、ローズウォーターには安定的な需要が発生します。
ダマスクローズとアルコール
同時期、同じ蒸留器で発酵物からアルコールが抽出されることが知られるようになりました。
アルコールという物質の存在とその製法が未熟ながらも生まれたのです。アルコールのアル(al-)は、アラビア語に起因します。
精製方法が確立されたアルコールと、ローズの花や、蒸留されたローズオイル、ローズウォーター(バラ水)はすぐに出会いました。
幸せなフレグランスが生まれた瞬間です。
- (2017-08-12)
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