バラの原種(西洋)
バラの原種(西洋)
西洋のバラ原種という考え方は非常に難しいかもしれません。
中国南部からヒマラヤ地方で生まれたバラの祖先は、進化とともに北半球を広範囲に拡散していきました。
西洋の原種と呼ばれるバラも、もともとはその祖先は中東にあり、中東のバラも、もともと中国南部・ヒマラヤ地方から来たものなので、どこからが中東原産、西洋原産とは言いにくい事情があります。
西洋のバラに大きな影響を与えたダマスクローズは、おそらく小アジア(アナトリア半島)からシリアの地中海沿岸で生まれたと言われています。
よって、中東原産のバラですが、ヨーロッパバラの祖先という意味で、ここでは西洋原産のバラに仮に分類します。
ダマスク香のロサ・ダマスケナ(Rosa damascena)・・・ダマスクローズ
ダマスクローズは、アナトリア半島からシリアにかけての地中海沿岸でロサ・フェニキア(Rosa phoenicia)とロサ・ガリカ(Rosa gallica)の偶然の自然交配から生まれたと考えられています。
ロサ・ダマスケナは、香り・形の点で、その後のヨーロッパバラの伝統となります。特に香り(芳香)の強さは特筆すべき特徴で、伝代の香水や化粧品・トイレタリーの香りに与えた影響は多大です。
ロサ・ダマスケナの強い芳香は、現在では「ダマスク系」(別名:ダマスク香)という言葉で、香りの一大カテゴリーとなっています。ダマスク系の香りは、もっともバラらしい、甘く華やかな香りです。
ダマスクローズは初夏に1回だけ咲きます。秋にダマスクローズとよく似たダマスクローズのようなバラ(オータム・ダマスク)が咲くため、ダマスクローズはときとして「サマー・ダマスク」とも呼ばれます。
ロサ・ガリカ(Rosa gallica)
ロサ・ガリカは、ヨーロッパ、とくにガリカ地方(ローマ時代、現在のフランスあたりはガリカと呼ばれていた)で古くから栽培されており、名前の由来はガリカ地方からと言われている。しかし、原産は中東と思われる。
ロサ・ガリカは、ロサ・フェニキアとともにダマスクローズの生みの親と見なされています。強い芳香と赤い花びらが特徴です。濃紅色の花色の先祖と考えられています。昔から薬草として利用されていたという話が残されています。
ロサ・アルバ(Rosa alba)
ラテン語で「白」を意味する「アルバ」の文字通り、ほとんど白色の花びらが特徴です。香りはダマスク系ですが、ダマスクローズほどの強さは少ないかと思います。
上品で気品に満ちた穏やかなダマスク系の香りです。歴史的には英国バラ戦争でヨーク家の紋章として有名です。
ロサ・アルバは、ロサ・カニナ(Rosa canina)とロサ・ダマスケナ(Rosa damascena)の自然交配から生まれたと考えられています。
当然、諸説ありよくわかりませんが、香りは、ロサ・ダマスケナ譲りで、花びらの白はロサ・カニナ譲りを彷彿させる姿です。
ロサ・アルバは、ロサ・ケンティフォリアの祖先と考えられています。
ロサ・ケンティフォーリア(Rosa centifolia) 別名:キャベジローズCabbage Rose
ケンティフォーリアローズは、花びらが密集していることが特徴です。
品種の名前である「ケンティフォーリア」は、「100枚の花弁」(centi=100、folia=葉)の意味です。ほんとうに100枚かどうか数えた人がいますが、概ね百数枚とのことでした。
ロサ・ケンティフォリアは、ダマスクローズとともに現代ローズ精油産業の数少ない精油バラほ一つです。ダマスクローズほどの採油量はありませんが、上品で深みのある香りが特徴です。
- (2017-08-12)
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